研究レポート
2022.09.21
スピルリナから抽出されたフィコシアニンによるニキビ治療の可能性を探る
わかめや昆布などと同じ藻類の一種であるスピルリナから抽出された「フィコシアニン」は、肌のバリア機能を高めるなど様々な有用性がある素材として近年注目されています。今回は、フィコシアニンを用いたニキビ治療の可能性について調査をした研究をご紹介します。フィコシアニンは水溶性の素材であることから、フィコシアニンを含む水溶性と油性の軟膏の2種類を調製し、各種実験を行い、比較検討しました。
本研究のポイント
フィコシアニンを含む水溶性軟膏はフィコシアニンを含む油性軟膏に比べ
- アクネ菌および表皮ブドウ球菌に対して高い抗菌活性を示しました
- のびが良く、粘着性に優れていました
- In vitroにおける薬剤拡散率が高いことが分かりました
実験方法
ニキビの原因ともなるアクネ菌および表皮ブドウ球菌に対するフィコシアニンの抗菌活性および最小発育阻止濃度を測定した。さらに、フィコシアニンが10 wt%含まれる水溶性軟膏とフィコシアニンが10 wt%含まれる油性軟膏の2種類を調製し、各種物性について比較検討しました。
実験結果と考察
1|フィコシアニンを含む水溶性軟膏は油性軟膏に比べ、アクネ菌および表皮ブドウ球菌に対して高い抗菌活性を示した
水溶性軟膏と油性軟膏における抗菌活性を測定しました。アクネ菌および表皮ブドウ球菌の最小発育濃度 (抗生物質の抗菌力を表す単位)は表1に示します。その結果、どちらの軟膏も抗菌活性を有することを示し、フィコシアニンを含む水溶性軟膏はフィコシアニンを含む油性軟膏よりも抗菌活性が優れていることが分かりました。
2|フィコシアニンを含む水溶性軟膏は油性軟膏に比べ、のびが良く、粘着性に優れていた
25度、30度、40度で両軟膏を180日間保存し、それぞれのpH、拡散性、粘性、小滴径について調査したところ、どの温度帯においても安定であることを確認しました。また、フィコシアニンを含む水溶性軟膏は油性軟膏に比べ、のびが良く、粘着性に優れていることを確認しました。
3|フィコシアニンを含む水溶性軟膏はフィコシアニンの油性軟膏に比べ、薬剤拡散率が高かった
両軟膏のIn vitroにおける薬剤拡散率を測定したところ、試験開始5時間後の薬剤拡散率は、水溶性軟膏は92%、油性軟膏は88%であることが分かりました。この結果より、フィコシアニンを含む水溶性軟膏は油脂性軟膏に比べ、薬剤拡散率が高いことが分かりました。
考察|
どの試験項目においてもフィコシアニンを含む水溶性軟膏が優れているという結果は、フィコシアニンが水溶性であることが関与していると思われます。また、油性軟膏を構成
するパラフィンやシリコーンオイルなどの鉱物油は、皮膚への脂肪蓄積を促進する可能性があるため、水溶性軟膏はニキビ治療により適していると考えられます。
まとめ
本研究からフィコシアニンが含まれる軟膏は、アクネ菌および表皮ブドウ球菌に対するニキビの治療薬として有用であることが示唆されました。フィコシアニンはスピルリナから抽出される天然由来の素材であることから、安心できるニキビの治療薬としての利用が期待されます。今後とも、フィコラボでは、フィコシアニンに関するさまざまな研究をご紹介していきます。
出典:Nihal, B. A. D. D. U. R. I., et al. “Formulation and development of topical anti acne formulation of spirulina extract.” International Journal of Applied Pharmaceutics (2018): 229-233.