研究レポート

2022.09.08

フィコシアニンを含む藻類抽出物が、更年期女性の健康状態や心理的な幸福感に与える影響

フィコシアニンは、藍藻類の一種であるスピルリナやクラマス藻の主要な色素の一つであり、脂肪酸を多く含むことから栄養補助食品として利用されています。今回は、フィコシアニンを含む藻類抽出物を2ヶ月間摂取したときの影響について調査した研究をご紹介します。

本研究のポイント

フィコシアニンを含む藻類抽出物の接種により、下記のことが明らかになりました。

  • 更年期女性の酸化ストレスが軽減されました
  • 更年期女性の更年期症状と心理的幸福感が改善しました
  • ホルモン変化を伴わなかったことから、ホルモン療法に代わる自然療法としての利用が期待されます

実験方法

本研究は、下記の条件を満たす女性21名の協力を得て行いました。

(1) 年齢47-54歳 

(2) 12ヶ月以上の無月経と4ヶ月以上の更年期症状 

(3) ホルモン治療を受けていない 

(4) 婦人科的管理および経膣超音波検査後に器質的問題と子宮機能不全がない 

(5) 心血管疾患、高血圧および糖尿病がない

被験者は2ヶ月間に渡って、フィコシアニンを含む藻類抽出物0.8 gを1日1回摂取しました。試験開始前とフィコシアニンを含む藻類抽出物の摂取後に、各被験者に対して定期的な血液検査およびホルモン検査を実施しました。また、更年期障害の心理的要素と身体的・運動的要素の両方をカバーする12問の質問を試験前後で実施しました。

実験結果と考察

1|更年期女性の酸化ストレスが軽減された

フィコシアニンを含む藻類抽出物の接種前 (T0)と接種後 (T1)で、各被験者の血漿中のマロンジアルデヒド(MDA)及び各種カロテノイド・脂溶性ビタミンの濃度を評価しました。測定の結果、MDAは38%有意に減少したことが分かりました。一方、各種カロテノイド・脂溶性ビタミンは有意に増加したことが分かりました (図1)。

MDAは、酸化ストレスの指標であり、一般に、更年期女性にみられるほてりや動脈硬化の促進などの典型的な症状は、エストロゲンの減少だけでなく、活性種産生の増加や抗酸化防御の欠乏によって酸化ストレスが増加することが知られています。また、表1に示される各種カロテノイド・脂溶性ビタミンは抗酸化作用をもつことが知られています。これらの結果より、フィコシアニンを含む藻類抽出物がもつ抗酸化作用が、更年期女性の酸化ストレスを軽減させることが分かりました。

図1. 藻類抽出物の接種による血漿中の各種カロテノイド・脂溶性ビタミンの増加量(※原論文より引用)

2|更年期女性の更年期症状と心理的幸福感が改善した

更年期障害の心理的要素と身体的・運動的要素の両方をカバーする12問の質問により、治療前と治療後の更年期症状と心理的幸福感を評価しました。その結果、フィコシアニンを含む藻類抽出物の接種により、更年期症状の緩和が見られ、また心理的幸福感が増すことが分かりました。

これらの結果は、血漿中のMDA及び各種カロテノイド・脂溶性ビタミンの濃度と相関が見られたことから、フィコシアニンを含む藻類抽出物の抗酸化作用に直接関係していると考えられます。

また、心理的幸福感との増加は、神経系内のアミン調節に深く関わるフィコシアニンなどのフェニルエチルアミンが寄与し、健康や幸福の多くの側面に不可欠なドーパミン作動性経路とセロトニン作動性経路の両方が変化したためと思われます。

3|ホルモン変化を伴わなかったことから、ホルモン療法に代わる自然療法としての利用が期待

フィコシアニンを含む藻類抽出物の摂取前後での、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、エストラジオールの血漿中濃度を測定しました。その結果、それぞれのホルモンにおいて有意な濃度変化は見られなかったことから、ステロイド作用がないことが確認されました。この結果から、フィコシアニンを含む藻類抽出物の接種はホルモン療法に代わる自然療法としての利用が期待されます。

まとめ

本研究により、フィコシアニンを含む藻類抽出物の接種は、更年期女性の健康や生活の質に対する好ましい効果を与えることが確認されました。本研究においては、今後、フィコシアニンそのものによる効果検証は必要ではありますが、フィコシアニンを含む藻類の健康効果は多様で魅力的であるといえるでしょう。今後とも、フィコラボでは、フィコシアニンに関する周辺領域の研究をご紹介していきます。

出典:Scoglio, Stefano, et al. “Effect of a 2-month treatment with Klamin®, a Klamath algae extract, on the general well-being, antioxidant profile and oxidative status of postmenopausal women.” Gynecological Endocrinology 25.4 (2009): 235-240.


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